ムカデに噛まれるという経験は、多くの方にとって強烈な痛みと不安を伴うものです。
特に、予期せぬ状況でムカデに噛まれた場合、どう対処すれば良いのか分からずパニックになってしまうこともあるでしょう。
この記事では、ムカデに噛まれた直後の応急処置から、現れる症状、毒の危険性、自宅での対処法、そして病院を受診すべき目安まで、網羅的に解説します。
正しい知識を身につけ、万が一の事態に備えましょう。
ムカデに噛まれた直後の応急処置
ムカデに噛まれたら、まずは落ち着いて以下の応急処置を行ってください。
- すぐにその場を離れる: ムカデは一度に複数回噛むことや、近くに他のムカデがいる可能性もあります。まずは安全な場所に移動しましょう。
- 患部を洗い流す: すぐに流水で患部をよく洗い流します。これにより、皮膚表面に付着した毒液や汚れがある程度取り除くことができます。
迅速な初期対応が、その後の症状の悪化を防ぐために非常に重要です。
ムカデに噛まれたときの症状と危険性
ムカデの毒には、ヒスタミンやセロトニン様物質、酵素などが含まれており、これらが様々な症状を引き起こします。
激しい痛み・腫れ・赤み・しびれ
ムカデに噛まれた際に最も特徴的なのは、焼けるような激しい痛みです。
多くの場合、噛まれた直後から数分以内に強い痛みが生じ、その後、患部が赤く腫れ上がり、熱感を伴うこともあります。
痛みの種類としては、ズキズキとした拍動性の痛みや、ジンジンとしたしびれを感じることもあります。
これらの症状は数時間から数日間続くことが一般的ですが、個人差が大きいです。
アナフィラキシーショックの危険性
頻度は高くありませんが、ムカデの毒によってアナフィラキシーショックを引き起こす可能性があります。
これは、アレルギー反応の一種で、命に関わる重篤な状態です。
主な初期症状としては、
- 全身のじんましん
- 呼吸困難、息苦しさ
- めまい、立ちくらみ
- 血圧低下
- 意識障害
などがあります。
これらの症状が現れた場合は、一刻も早く救急車を呼び、医療機関を受診する必要があります。
過去にムカデや蜂などに刺されてアレルギー反応が出たことがある方は特に注意が必要です。
噛まれた跡について(画像・経過)
ムカデに噛まれた跡は、通常、ムカデの牙(顎肢)による2つの小さな赤い点として観察されます。
この噛み跡を中心に、炎症による赤みや腫れが広がります。
経過の例(個人差があります):
- 噛まれた直後~数時間: 激しい痛み、噛み跡を中心に赤みと腫れが出現し、徐々に拡大。
- 数時間~数日: 痛みがピークを過ぎると徐々に軽減するが、腫れや赤み、かゆみは続くことが多い。場合によっては水ぶくれができることも。
- 数日~1週間程度: 症状が軽快に向かい、腫れや赤みが引いていく。かゆみは残ることがある。
- その後: 多くの場合、跡形もなく治癒しますが、体質や処置の状況によっては、色素沈着が残ることがあります。
(※実際の画像を掲載することはできませんが、上記のような経過を辿ることが一般的です。)
自宅でできる対処法とNG行為
適切な応急処置の後は、自宅でのケアが重要になります。
しかし、間違った対処法は症状を悪化させる可能性もあるため注意が必要です。
毒を洗い流す(石鹸とお湯を使う)
ムカデの毒は熱に弱い性質があると言われています。
可能であれば、40℃以上(お風呂より少し熱いくらい)のお湯と石鹸を使って、患部を10分以上しっかりと洗い流しましょう。
これにより、皮膚に付着した毒を洗い流し、毒の活性を弱める効果が期待できます。
例えば、新金海クリニックの解説ページでも、「ムカデの毒は42℃以上の熱に弱いため、刺された直後の場合は冷やすのではなく、温めた方が良いとも言われています。」と紹介されています。
ただし、熱すぎるお湯は火傷の原因になるため、温度には十分注意してください。
冷水で洗う場合でも、石鹸を使って丁寧に洗い流すことが重要です。
患部を冷やす
洗い流した後は、患部を冷やして炎症と痛みを抑えます。
清潔なタオルで包んだ保冷剤や氷嚢などを当てて冷やしましょう。
ただし、冷やしすぎると凍傷のリスクがあるので、適度な時間で休憩を挟みながら行ってください。
市販薬や軟膏を塗る(ステロイド剤など)
炎症やアレルギー反応を抑えるためには、ステロイド成分を含む軟膏(塗り薬)が効果的です。
また、かゆみが強い場合は、抗ヒスタミン成分が配合された軟膏も良いでしょう。
薬局やドラッグストアで購入できますが、薬剤師に相談して適切なものを選びましょう。
痛みに対しては、市販の鎮痛剤(内服薬)を使用することも検討できます。
放置は絶対にNG
「たいしたことないだろう」とムカデに噛まれた箇所を放置するのは絶対にやめましょう。
適切な処置をしないと、症状が悪化したり、細菌感染を引き起こしたりする可能性があります。
特に、アナフィラキシーショックは初期症状が軽微でも急速に悪化することがあるため、油断は禁物です。
自宅での対処法とNG行為を以下にまとめました。
自宅でできる適切な対処法 | 絶対にやってはいけないNG行為 |
---|---|
患部を石鹸と40℃以上のお湯で洗い流す(火傷に注意) | 毒を口で吸い出す |
患部を清潔に保ち冷やす | アンモニア水をかける |
市販のステロイド軟膏などを塗る | 患部を強く揉む |
必要に応じて市販の鎮痛剤を服用 | 適切な処置をせず放置する |
病院に行くべきケースと受診の目安
自己判断で大丈夫だと思っても、専門医の診察が必要な場合があります。
どんな症状が出たら病院へ?
以下の症状が見られる場合は、速やかに医療機関を受診してください。
-
アナフィラキシーショックを疑う症状:
呼吸困難、息苦しさ
めまい、ふらつき、意識が朦朧とする
全身のじんましんや強いかゆみ
吐き気、嘔吐、腹痛
声のかすれ、飲み込みにくさ
(これらの症状がある場合は、迷わず救急車を要請しましょう) -
症状が非常に強い、または悪化している場合:
我慢できないほどの激しい痛みや腫れが続く
噛まれた範囲が広範囲に及んでいる
患部が化膿してきた、熱感がひどい -
全身症状が出ている場合:
発熱
頭痛
倦怠感 -
その他:
過去にムカデや蜂などに刺されてアレルギー反応が出たことがある方
乳幼児、高齢者、アレルギー体質の方
数日経っても症状が改善しない、または悪化する場合
不安が大きい場合
何科を受診すれば良いか
基本的には皮膚科を受診しましょう。
皮膚の炎症やアレルギー症状に対する専門的な治療が受けられます。
アナフィラキシーショックの症状が出ている場合は、救急科のある病院へ緊急搬送されることになります。
どの科を受診すれば良いか迷う場合は、まずかかりつけ医に相談するか、総合病院の受付で症状を伝えて指示を仰ぐのも良いでしょう。
ムカデに噛まれないための予防策
最も大切なのは、ムカデに噛まれないように予防することです。
-
家の周りの環境整備:
ムカデの餌となるゴキブリやクモなどの虫を駆除する。
家の周りの落ち葉、枯れ木、石の下など、ムカデが潜みやすい場所を定期的に清掃する。
雑草を除去し、風通しを良くする。
建物の基礎周りや窓枠などに、ムカデ用の忌避剤や殺虫剤を散布する。 -
家の中への侵入防止:
窓やドアの隙間、壁の亀裂などを塞ぐ。
網戸の破れを修理する。
換気扇やエアコンのドレンホースなど、外部とつながる部分に侵入防止ネットやフィルターを設置する。
湿気を好むため、浴室、洗面所、キッチンなどは換気を心がけ、乾燥させる。
くん煙剤を定期的に使用する。 -
日頃の注意:
寝る前には布団やベッド周りを確認する。
洗濯物を取り込む際や、靴を履く前には、中にムカデが潜んでいないか確認する。
庭仕事やキャンプなど、屋外で活動する際は、長袖・長ズボン、手袋、厚手の靴下などを着用し、肌の露出を避ける。
不用意に石や朽木をひっくり返さない。
これらの対策を講じることで、ムカデとの遭遇リスクを減らすことができます。
ムカデに噛まれた際は、慌てずに適切な応急処置を行い、症状によっては速やかに医療機関を受診することが大切です。
この記事が、万が一の際の助けとなれば幸いです。
免責事項:
この記事は、ムカデに噛まれた際の一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスに代わるものではありません。
症状の判断や治療については、必ず医師の診断を受けてください。
この記事の情報に基づいて生じたいかなる損害についても、責任を負いかねますのでご了承ください。